色彩表現のルーツを探る
人類は数万年の昔から絵画を制作してきました。顕色材である顔料と展色 材である樹脂や油を駆使してその時代を代表する名作をつくり上げてきた のです。最も古い方法としては、身近な土や鉱石を粉にし、水や動物の膠、 木の脂で練り上げ、洞窟の内部に描画した壁画があります。

この流れを汲むものとして、消石灰の壁をつくり、顔料を水で溶いて描画 をする「フレスコ画」があります。
このフレスコは新鮮なとか新しいという意味のイタリア語です。石灰の壁 は炭酸カルシウムとなり耐久性のある画面をつくります。

この描画法は壁の吸収力と皮膜の形成を利用するものですが、顔料に接着 力のある糊剤を混合した絵具であればもっと自由に描画出来るわけです。

※ 練り板と練り棒を使って絵具を練る、若い徒弟。 絵具は産業革命以前 は画家の工房で作られていました。
それ自体に接着力を持つ糊剤と顔料を混ぜ合わせた絵具を用いた代表的な ものが、顔料に膠を入れた「膠画」、殊に我が国では「日本画」と呼ばれ ている描画法です。膠は少ない量で顔料を固定できますので、顔料の本来 の色を損なわずに表現に使用できるのです。 この膠に似た糊剤に卵があり、 それを用いた絵具を一般に「テンペラ絵具」、それで描いた作品を「テン ペラ画」と呼びます。

テンペラとは複数の材料をきちんと計量することを意味しており、それは まさしく顔料と展色材を計量・混合する絵具の様子を表しています。この 広義に対し、狭義の意味では、展色材に卵を使用したものにテンペラとい う語を適用しています。膠や卵は動物性蛋白質でかなり昔から使用されて きましたが、それらに劣らず植物から得られる樹脂も使用されてきました。

アカシア科の木の樹脂アラビアゴムです。容易に水に溶け、腐敗も少ない ので水彩絵具の展色材として現在も重要な位置を占めています。アラビア ゴム濃度が高いと「透明水彩絵具」低ければ「不透明水彩絵具」となります。
テンペラ絵具のような水性の絵具は乾燥が早く表現上不便な点があります。 そこで、表現の容易な顔料を油で練った「油絵具」が登場してきます。 油絵具は乾燥がゆっくりで透明性もあり、また肉厚の表現もできて画家の 要望に的確に応えることができたのです。

そして、今日においても隆盛を極めています。油絵具における作品の中で 肖像画は大きな勢力を有していますが、16世紀ごろは高価なものでした。 そこで手軽に肖像画を描くための材料として顔料を水性糊で練り固めた 「パステル」が活用されるようになります。

固形絵具は今日も大きな人気を得ています。18〜19世紀は顔料も多く開発 され画家のパレットを色どります。そして、20世紀には合成樹脂が絵具の 展色材として採用されます。いわゆる「アクリル絵具」です。 アクリル絵具は、水で溶解し、さまざまなものに自由に描くことができ、 かつ耐久性のある画面ができます。そして従来なかった新しい表現が開発 されていくのです。

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